「精神科ER 緊急救命室」
「精神科ER 緊急救命室」
備瀬哲弘著
【BOOKデータベースより】
都知事の発案でより早く急患に対応すべく急遽開設された「東京ER」。その精神科は、日々、緊迫した空気に包まれている。パトカーや救急車でひっきりなしに運ばれてくる患者たち。父親から捨てられ自殺を図った兄妹。心のバランスを崩し、深夜の霊園で叫ぶサラリーマン。「愛が欲しい」と恋人の前で包丁を取り出す女性。極度の緊張の中、厳しい現実と格闘した現役精神科医が語る壮絶人間ドキュメント。
緊急救命室には、体の病気やけがに対応するところだけではなく、精神科のERもある。そんなことをはじめて知った。
確かに、発作的な症状ということで考えれば、救急を必要とする精神症状もあるだろうけれど、そのような対応をしているところがあるとは。。。
著者の備瀬氏は、府中病院でこの精神科ERを担当していた精神科医である。日々、さまざまな症状で救急搬送されてくる患者さんと真摯に向き合う彼の姿と思いにひきこまれる。
複雑な症状と事情で搬送されてくる患者さんをとりまく、家族・警察・他の診療科の先生・一次対応をする部門等とのかかわりやコミュニケーションの取り方に関しても、なるほど・・・と思うことが多かった。
患者さんの立場に立って読むと、自分自身も家族も、精神科ERのお世話になる可能性はゼロではないとなんとなく不安な気持ちにもなる。この本に書かれている患者さんのうちのいくつかのケースは、突発的に緊急を要する症状が起こったり、その症状が起きた原因もよく分からなかったり(つまり、原因を取り除く方法が、自分も家族も分からないということ)しているのだから・・・。
自分がそして家族が、もしもそんな状況になったとき、少しでも不安を取り除くような対応を考え、実践している先生方に感心しきりだった。(そうじゃないお医者さんもいるからねえ)
備瀬氏が医学生時代、専門科を決めようか・・・というときに、先輩に、「なんにも知らないし、なんにもできない精神科」と言われたという記述がある。その後、臨床実習などの紆余曲折を経て、精神科の医師となるわけだが、失礼ながら、その選択に、なんとなくワタシと同じ香りを感じて思わず笑ってしまった。
「普通に考えたらこっちじゃないか?」「今後を考えたら普通はこっちでしょう」と、アドバイスをもらいつつ、結局、いわゆる世間でいう本道からあえて自ら外れるというね・・・。
不器用でがんばる人ほど生きづらい今の日本。
この本に書かれている。「一生懸命やってきたのに、、、精神的な症状を発症してしまった人たち」の事例は、読んでいて苦しくなることも。でも、そんな人たちを助けようと昼夜問わず働く人たちがいる。それを知ってほしいという意味で、オススメ。
Comments