「リーダーは自然体」
「リーダーは自然体」
増田弥生/著 金井壽宏/著
光文社新書
【出版社のWebサイトより】
金井
「リーダーと呼ばれる人は、みんなどこかで無理をしていますよね。係長になったら少し無理をし、課長になったらもっと無理をし、部長になったらもっともっと無理をしているような気がします。(略)しかし増田さんを見ていると、ご自身は自然体を意識していないとおっしゃいますけど、少なくとも無理なくやってこられているように見受けられます」
増田
「30代前半でリーバイ・ストラウスという企業に入り、『社員全員にリーダーシップを期待する』というメッセージを受け取りました。以来、『ふつうの私が発揮する日常のリーダーシップ』を意識しています。リーダーが『すごい』のではなく、リーダーシップを発揮すれば、誰でも『すごい』ことができると信じています」
(本文より抜粋)
経歴だけを見ると華々しい増田さん。日本の大企業からはじまり、世界中でビジネスを展開している外資系有名企業の人材開発部門でリーダーという役割を担っていたとなれば。。。
でも、この本(半分は金井教授と増田さんの対談という構成をとっている)をよーく読み進めていくと、彼女の一見華々しいキャリアは、「結果」であり、そのプロセスは、副題の通り「無理せず、焦らず、ありのまま」であったということが分かる。
MBAもTOEICも無縁だった一女性社員が、結果として、外資系企業の「本社」で活躍し、人事部門の「トップ」になったわけだが、増田さんは決してそれをゴールとして目指してきたのではない。あくまでも、都度必要に応じて目の前のことに一生懸命だった結果、なのだと思う。
増田さんのキャリアの軌跡が書かれているが、ワタシが一番印象に残ったのは、外資系企業でがんばっていたその時のことではない。リーバイスを辞めて「3年間浪人中」だった時の記述である。
リーバイスをやめた私は定職につかず、肩書きなし、名刺なしで暮らしました。少しは不安になるかと思いきや、やってみたらとても楽しい3年間でした。仕事がなくても平気で生きていられるのも一つのスキルではないかと今では思っています。
(中略)
本当に暇なときは蟻を眺めて半年ぐらい過ごしていました。蟻というのは社会的動物で、群れの動きを見ていると、行動のルールやコミュニケーションの仕方が分かって、なかなか興味深いものでした。
(中略)
こうして暮らしてみてつくづくわかったのは、自分がいかに狭い世界で生きてきかということでした。リーバイスにいた頃の私は、世界を股にかけて飛びまわっているつもりでした。
(中略)
テレビで国会中継やお笑い番組や主婦向けの情報番組を見てると、私の知らないことがいっぱい放送されていました。自分はいかにいろいろなことを見逃してきたのかと思わざるをえませんでした。近所の子どもたちには子どもたちの世界がありましたし、アルバイトで知り合った人たちにもその人たちの世界がありました。そうか、私は、リーバイスという狭い世界の中にいたにすぎなくて、世界全体を知っていたのではないのだと考えなおしました。
金井教授も書かれているが、ふつうならば「キャリアの空白」としてネガティブにとらえがちなこの期間を、増田さんは「むしろ大切なキャリアの1ページ」ととらえている。その視野の広さ・・・というか、客観的に自分と他者をみつめることができていること(これは一種の才能なのかな???)が非常に印象深かった。
どんなに英語ができようが、MBAとか持っていようが、専門知識が高かろうが、ついていきたいと思えないリーダーもいる。
増田さんは、リーダーとしてついていきたいな・・・というか、一緒に働きたいなと思わせる、人間的に魅力的な視点を持った方なのではないかと感じた。
巷に多くあふれているリーダーノウハウ本や野心いっぱいのビジネス本に疲れた方に・・・特にオススメ。
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