<光文社HPの紹介文より・・・>
不本意な異動、でも辞められない――
大手広告代理店を辞め、食品メーカーに中途入社した凉平は、役員会議で上司と喧嘩してしまい、「リストラ要員強制収容所」と噂される「お客様相談室」に異動となった。「お客様の声は、神様のひと言」が社訓のこの社のこの部署では、朝から電話が鳴り響く・・・。
一癖もふた癖もある上司に同僚たち、次々と明らかになる会社の実態に愕然としながらも、凉平は奮闘していく。軽妙酒脱な筆数で読ませる源氏鶏太以来のサラリーマン小説。
ちょっと軽い感じの小説を読みたくなってセレクト。
消費生活アドバイザーの更新研修を(e-Learningにて)受講したばかり・・・というタイミングもあるかも。
(消費生活アドバイザーは、自治体の消費者センターや企業のお客様相談室で電話等の相談を受けることが主たる仕事)
懐かしい日々を思い出した。
ワタシも、かつて、この小説の舞台となっている「お客様相談室」的な部署で働いたことがある。
某求人広告誌の広告相談室。。。
求人広告と実態(勤務条件)が違っていたりとか、そういう苦情や相談を受ける部署。
独立後だったので、非常勤で週3日ほど1年間。
今思えばなかなかおもしろい経験ができた。
当時、苦情で多かったのは、
「パブと聞いて行ってみたら風俗だった」(←このパターン、めちゃくちゃ多かった!)とか。
「リゾートバイトの勤務条件が過労死するほど厳しい」とか。
「経営が傾いて給料がもらえない」とか。
「書店店員と聞いて行ってみたら、成人向け雑誌専門店だった」とか。
結構、風俗ネタが多かったかな・・・。
お客様(=電話をかけてくる人)の中にも、変わった人もいたが。
一番大変だったのは、営業など社内他部署との折衝。
営業は広告を取りたいので、若干色をつけた内容の記載にする・・・
それでお客様から苦情。。。
営業は、法律やお客様のことを考えてないわけではないだろうが、
保身&営業にとってのお客様(=広告主)を守りたいという意識も働く・・・。
という、組織におけるアレヤコレヤが体験できた。
でも「広告相談室」という部署、この小説と同様、なんとなく「窓際部署」っぽさをかもし出していたのは否定できない。
オフィススペースのあるビルの場所とか。配置とかから考えても。
正社員の方々はすんごく個性的でおもしろい人ばかりだったんだけどな~。
紅一点の事務担当の女性なんて、若くてロングヘアのきれいな人だったのだが、ユニークでいい意味で「群れない」性格の良い子だったし。
シゴトを教えてくれた担当の男性社員の方も、いい人だったな・・・。
まあ、みんなユニークだったけど!
ワタシの場合、新卒で入った大会社で配属になった部署も、正直花形部署ではなかった。
でも、ソニーの出井さんも言っている。
「花形には行かない。あえて、日陰を選ぶ。」(・・若い頃のことだと思う)
「出世の早さ遅さなんて人生では誤差の範囲」
(「就職ジャーナル」2008年5・6月号)
いきなり花形部署なんかに行くよりも、左遷と言われようが、おもしろがっちゃうもん勝ちなんじゃないかな?
話しを小説に戻すと・・・。
いろんなトラブルが飛び込んでくるシゴト、社訓にそぐわない社内のどうにもならないダメさ加減などに参ってきた
主人公が、先輩社員(この人も相当の変わり者)に尋ねる。
「会社っていったい何なんでしょう?」
先輩社員は、会社をおでん鍋に例えて答える。
「このおでんやじゃ、牛スジが一番高くてえらそうだけど、他の食い物屋に行けば使っちゃもらえない。こんにゃくはここじゃ安物だけど、味噌田楽の店に行けば堂々のエリートだよ。」
「ちくわぶは言ってみれば専門職。天職を見つけたヤツだな。よそには行けないけれど、おでんの中では存在感を示すことができる。似ていても、ちくわはよそにも転職が可能だ。」
「会社の序列なんて、たいした順番じゃないんだよ。一歩外に出たら、ころりと変わっちまうかもしれない。」
会社=おでん鍋。
何でおでんに例えようとしたのか・・・は置いておいて。
こうして考えてみると、キャリア(働くということ)もシンプルで分かりやすいなあ。
テンポがよくて痛快なサラリーマン小説。オススメ。
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